シリーズ第19作目となったこの「ワールド・イズ・ノット・イナフ」は1999年に公開された.オープニングクレジット前のシーンは約15分にも及び,現在のところシリーズ中最も長い.そのうち7分ほどがテムズ川でのボートチェイスシーンに割かれているが,最後まで息をつかせない.他にも第14作「美しき獲物たち」以来のスキーチェイスシーンや実物大セットが組まれたキャビア工場での戦闘シーン,そしてラストの潜水艦での戦闘シーンなど,見所がたくさんある.なおタイトル「ワールド・イズ・ノット・イナフ」はボンド家の家訓として代々引き継がれている言葉で,第6作「女王陛下の007」で登場するボンド家の紋章にラテン語で書かれている(セリフでも言っている).残念なことに,第2作目からQ役で親しまれてきたデズモンド・リューウェリンはこの撮影後に交通事故で他界した.
MI6がキング卿の金を取り戻すことに成功した,しかしキング卿はこともあろうにMI6内でその金が爆発を引き起こし殺されてしまう.テムズ川から様子をうかがっていたボートを追跡するも犯人は自殺し,ボンドも負傷する.この事件の裏には無政府主義者レナードが見え隠れしていた.彼はキング卿の娘,エレクトラを誘拐していたのだ.エレクトラのもとへ向かうボンドだが,レナードとエレクトラから共通の人生哲学 "There is no point in living if you can't feel alive" を聞き,二人の間の不思議な関係に気がつく.
ジェームズ・ボンド | ピアース・ブロスナン |
エレクトラ・キング | ソフィー・マルソー |
レナード | ロバート・カーライル |
クリスマス・ジョーンズ | デニス・リチャーズ |
ヴァレンティン・ズコフスキー | ロビー・コルトレーン |
シガー・ガール | マリア=グラツィア・クッチノッタ |
M | ジュディ・デンチ |
Q | デズモンド・リューウェリン |
R | ジョン・クリース |
マニーペニー | サマンサ・ボンド |
タナー | マイケル・キッチン |
ロビンソン | コリン・サーモン |
監督 | マイケル・アプテッド |
製作 | マイケル・G・ウィルソン/バーバラ・ブロッコリ |
脚本 | ニール・バーヴィス/ロバート・ウェイド/ブルース・フィアスティン |
撮影 | エイドリアン・ヒドル B.S.C. |
編集 | ジム・クラーク |
特殊効果 | クリス・コーボールド |
プロダクション・デザイン | ピーター・ラモント |
メイン・タイトル | ダニエル・クラインマン |
音楽 | デヴィッド・アーノルド |
オープニングクレジット前のシーンで登場するジェットボートはQが引退後の楽しみにと釣り舟として作ったものらしい.しかし釣り舟にしては装備が豪華で,防弾ボディー,GPS(ルート自動検索機能つき),ボートごと潜る機能,そして魚雷まで装備されている.腕時計には照明機能,ボンドを支えられるワイヤーロープとピトン発射装置がついている.雪崩から身を守るためのスキージャケット,クレジットカード型万能開錠キー等が登場する.また今回のボンドカーBMW Z8にはミサイルなどが搭載され,リモコンでの遠隔操作も可能となっている.