前作「ムーンレイカー」では行動範囲が宇宙にまで広がり,あまりにも大規模な任務となってしまった.そこで製作陣がボンドの原点に戻ろうというコンセプトのもとに製作したのがこの「ユア・アイズ・オンリー」である.「ユア・アイズ・オンリー」とは「読後焼却すべし」という意味である.今回は極力秘密兵器に頼らずに行動し,肉体派のボンドを見せている.しかし伝統となっているシーンは登場し,カーチェイスやスキーチェイスなどは健在である.なおこれまでMを演じてきたバーナード・リーが1981年に他界したため,本作はシリーズで唯一Mが登場しない作品となった.またリスル伯爵夫人を演じるカッサンドラ・ハリスは本作撮影中に後に5代目ボンドとなるピアース・ブロスナンと挙式を挙げている.
地中海を調査していた英国スパイ船「セント・ジョージ」が何者かが仕掛けた機雷によって沈没した.この船にはミサイルを自由に操って誘導できる装置,ATACが搭載されていた.それを知ったソ連はさっそくギリシャの組織にATACを手に入れるように依頼する.一方ボンドは政府にかわって調査していたハブロック博士が殺されたことによってギリシャへ飛ぶ.博士の娘,メリナに接触し,彼女とともに調査を開始する.
ジェームズ・ボンド | ロジャー・ムーア |
メリナ・ハブロック | キャロル・ブーケ |
ミロス・コロンボ | トポル |
ビビ・ダール | リン=ホリー・ジョンソン |
アリストテレス・クリスタトス | ジュリアン・グローバー |
エミール・ロック | マイケル・ゴットハード |
リスル伯爵夫人 | カッサンドラ・ハリス |
Q | デズモンド・リューウェリン |
マニーペニー | ロイス・マックスウェル |
監督 | ジョン・グレン |
製作 | アルバート・R・ブロッコリ |
製作総指揮 | マイケル・G・ウィルソン |
脚色 | リチャード・メイボーム/マイケル・G・ウィルソン |
撮影 | アラン・フーム |
プロダクション・デザイン | ピーター・ラモント |
編集 | ジョン・グローバー |
メイン・タイトル | モーリス・ビンダー |
音楽 | ビル・コンティ |
今回は久しぶりに秘密兵器があまり登場しない.「私を愛したスパイ」で大活躍したロータス・エスプリだがターボ仕様にグレードアップして登場してすぐに盗難予防装置(窓を割ると作動)が作動して爆破されてしまう.ボンドが実際に使っているのは双眼鏡型カメラぐらいで,あとはQの研究所でいくつか見られる.スイッチを入れると相手の頭を強打するギブス(急に外れる),雨が降り出すと傘の骨の先端部分が刃となって閉じてしまう傘,顔の特徴を入力するだけで世界中の犯罪者ファイルと照合してくれる人相認識装置(アイデンティグラフ)など.